ガラパゴス雑記

ガラパゴスについて。

私の中でほとんどバイブルと化している、堀江敏幸氏の「河岸忘日抄」(新潮社)の中に、このガラパゴスが出てきます。

異郷の河に浮かぶ船を住処とし、時折やってくる郵便配達夫に珈琲をご馳走していても、好奇心のまま船に遊びに来るロマの少女のためにクレープを焼いていても、とりとめもなく音楽や文学について思考をし続けている「彼」。

正体の見えない息苦しさから逃避した隠れ家生活のなかで、些細な出来事にもひとつひとつ丁寧に意味付けをしながらも、ためらい、逡巡し、どこか上の空で暮らす「彼」と、船の大家である偏屈で謎めいた老人とのやり取りの中に、このガラパゴスが登場します。

なぜこのくだりで使われる珈琲がブラジルやコロンビアやキリマンジャロではなく、ガラパゴスだったのか。

何度も繰り返し読んでいくとその意味に気づかされます。

ご興味のある方はどうぞ読んでみてくださいませ。本当に本当に、素晴らしい小説です。

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