タイからのお客さま 後編

前回の続きです。

二軒目の喫茶店は、大名の「フッコ」さん。私が(勝手に)心の師匠と仰いでいるマスターのお店です。

今回はマスターがご不在で、普段は福岡空港の近くの姉妹店にいらっしゃるマスターがいらっしゃいました。

看板の写真を撮るBayさん。このポーズ。なんだかとても自分と同じ人種なにおいを感じます。

ドリップを真剣に見つめるBayさん。ちょんちょんちょんとお湯を落としていくので、とってもリズミカルなドリップです。

日本のほとんどの珈琲屋さんはアラビカ種しか置いていませんが、フッコさんではロブスタ種をストレートで飲むことが出来ます。

インドネシアの国営農場で作られている、ジャワロブスタ。きなこのような香りがします。ロブスタ種はインスタントコーヒーや缶コーヒーの原材料に使われる品種なので、安い、まずいという印象で語られることが多いのですが、このジャワロブはえぐみもしぶみもなく、ほんのり甘くてとっても美味しい。

浮空でも時々ブレンドに使っています。今度はストレートでだしてみようかなと思いました。

年代もののメニューとはかり。フッコは開店して33年になります。もとは別の場所にあったのですが、7年前の福岡西方沖地震で建物が倒壊し、現在の大名に移転されました。

ジャワロブスタ、ブレンド、そしてオレンジリキュールを使ったラテの三種類を頼んで二人で半分こしました。

カップは地元福岡の民窯、小石原焼と小鹿田焼。ぽってりした器は口当たりが優しいです。

自家製のクッキーは一枚20円。きなこ、ごまなど。お皿は小石原焼。飛び鉋(トビガンナ)と呼ばれる模様が特徴です。

満腹でも珈琲は別腹のふたりでした。

珈琲の流通や産地の話、豆の話、焙煎の話、私の英語力不足でつたわらないこともたくさんありましたが、すごく勉強になりました。

 

Bayさん、そしてBayさんを紹介してくださったバンコク在住の友人のひさちゃん、本当にどうもありがとうございました。

とてもとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。

私は11月にタイ、ベトナム、ラオス、カンボジアのコーヒー産地をまわってきます。

農園や流通の現場をこの目で見られるのが楽しみです。

タイからのお客さま 前編

こんばんは、浮空です。

先日、浮空にタイ・チェンライの生豆を分けて下さっているBayさんにお会いしました。

Bayさんはチェンライ産のコーヒー豆を日本やシンガポールに輸出する仕事をしていらっしゃいます。

今回はハードスケジュールの中、お仕事の合間を縫って福岡まで足を運んでくださいました。

秋晴れの福岡空港へお迎えに。送迎デッキがビアホールになっていました。

日本食はなんでも大丈夫ということでランチはお寿司。中州川端の博多座の近くにある「しゅ籐」さんへ。

とにかく最初から珈琲の話。お寿司を食べながらも、ずっと珈琲の話。

わからない単語はスマホのアプリで翻訳しつつ、易しい英語で話してもらってなんとか単語で受け答えする浮空でした。

話題の中心が珈琲なので、なんとかなるものですね~。タイのコーヒー事情や、輸出のこと、日本のコーヒー文化などなど、わからないなりに会話が弾みます。

珈琲を飲んだほうが良く眠れるよね、っていう珈琲好きならではの共通点があって意気投合。笑。

そして珈琲を飲みすぎると胸が小さくなるという衝撃の話題が。初耳でしたが、身をもって納得・・・・・・・・・

ランチの後は喫茶店をはしご。タイはハンドドリップのお店が少ないということで、ハンドドリップを楽しめる老舗へ行きました。

一軒目は六本松の「ひいらぎ」さん。

店内に並んだコーヒーカップの中からお客さんが好きなものを選ぶことができます。私はフィンランドのARABIAを、Bayさんは唐津焼を(しぶい!)選びました。

珍しいARABIA。80年代の限定もの?だそうです。きれいな青。

ドリップの様子を動画撮影するBayさん。マスターも快く撮影をOKしてくださいました。カウンターの向こうで常連さんたちがニコニコ見守っています。

動作のひとつひとつが洗練されていて流れが美しいドリップです。豆は神戸の炭火焼珈琲屋さんのもの。

Bayさんも気に入って下さったようです。

ひいらぎの珈琲は一杯850円。確かに安いとは言えない値段だと思います。けれど、カウンターの中の年代物のレジスターの横には(お客様には見えない場所に)実はこんな張り紙があるのです。

「いらっしゃいませから ありがとうございましたまでが 850円」

マスターの、おもてなしの気持ち。「あなたのための一杯」に集中する呼吸。味だけではない、ハンドドリップの奥深さを感じさせてくれる喫茶店です。

後半へ続きます。

焙煎の火力 秋冬

こんばんは、浮空です。

朝晩はすっかり涼しくなってきて、いつも持ち歩いているサーモボトルも熱々の珈琲を入れることが多くなりました。

季節の変わり目は、焙煎の火力の変わり目でもあります。

室温が下がっているからといって焙煎の時間を長くしたり、火力をあげすぎると表面が焼けすぎてしまうし、火力を弱めると豆が芯からふっくらしてくれません。

秋冬仕様の焙煎にするためにちょっと実験をしています。

使うのはこれ。

どんな石が良いのかいろいろ調べた結果、値段も手ごろで使い勝手がよさそうなトルマリン鉱石にしました。

直径4~5cmの石を2kgほど用意。想像していたよりつやつやしてきれいです。

トルマリン鉱石は、岩盤浴などに使われていて、炭などと同じように酸化防止効果やマイナスイオン効果などがあるそうですが、そのあたりの効果は特に考えていなくて、石焼ビビンバみたいに石に蓄熱させて焙煎時の熱量を増やすことを目的にしています。

金網に石を敷いて、直火を半分ほど遮って遠赤外線で豆を焼く方法と、コンロ周りに石を敷いて蓄熱させ、安定した熱量を確保する方法とを試しています。

特に、丸っこくて厚みのある豆をいかに芯までふっくらさせるかがこの秋の課題です。

 

 

 

ブレンド 2012.9.17

こんばんは、浮空です。

今年は当たり年なのか、またしても巨大な台風に見舞われておりました。

雨が降っていないときの台風の空の複雑な雲の色が好きです。

いろんな形の雲が高く低く、風にちぎられるように流れていきます。ずっとみていても見飽きません。

今日はヴィレッジヴァンガードさん用の豆の焙煎の日でした。

毎回少しづつ種類を変えて納品させて頂いています。

今回はグァテマラ エルピラールとあっさりめのブレンド。

ブレンドは、タイ チェンライ、キューバTL、パプアニューギニアの三種です。

タイチェンライの柔らかな酸味、キューバの甘み、パプアのコクでをそれぞれ活かして、あっさりめのブレンドに仕上げました。

豆の大きさに多少ばらつきがあるのでアフターミックスにしようかと思いましたが、煎り度合いを合わせることでバランス重視を優先してプリミックスです。

袋詰めの途中。袋内部に見えている白いラインの部分は、アロマブレスといって、袋をとじたあともガスだけをを外へ抜いてくれる特殊加工です。

このブレンドは、明日から今月一杯まで、ヴィレッジヴァンガード イオン直方店にて販売してます。

どうぞよろしくお願いします。

ガラパゴス雑記

ガラパゴスについて。

私の中でほとんどバイブルと化している、堀江敏幸氏の「河岸忘日抄」(新潮社)の中に、このガラパゴスが出てきます。

異郷の河に浮かぶ船を住処とし、時折やってくる郵便配達夫に珈琲をご馳走していても、好奇心のまま船に遊びに来るロマの少女のためにクレープを焼いていても、とりとめもなく音楽や文学について思考をし続けている「彼」。

正体の見えない息苦しさから逃避した隠れ家生活のなかで、些細な出来事にもひとつひとつ丁寧に意味付けをしながらも、ためらい、逡巡し、どこか上の空で暮らす「彼」と、船の大家である偏屈で謎めいた老人とのやり取りの中に、このガラパゴスが登場します。

なぜこのくだりで使われる珈琲がブラジルやコロンビアやキリマンジャロではなく、ガラパゴスだったのか。

何度も繰り返し読んでいくとその意味に気づかされます。

ご興味のある方はどうぞ読んでみてくださいませ。本当に本当に、素晴らしい小説です。

ガラパゴス

ガラパゴス 008

ガラパゴス諸島は、南米エクアドルの沖合い1000kmにある、赤道直下の島群です。

ダーウィンの進化論(種の起源)で有名ですが、孤絶した環境で昔のままの生態系が保たれているため、動植物が環境によって違った進化のプロセスを辿るとことが顕著にわかる例として保護されている地域で、世界遺産にも登録されています。

コーヒー農園は標高800mくらいで、コーヒー産地の中では比較的低い地域にあります。法律で農薬や化学肥料の使用が禁止されているため、ガラパゴス産の農作物はすべて完全オーガニックです。

生豆は小売して下さったお店でそれなりの期間保管されていたようで、かなりエイジングされていました。しっかり乾燥しているため豆が硬く、色も白っぽいです。欠点豆は少ないのですがシワのよった豆が多いのでうまく熱をいれてこのシワを伸ばしきるために焙煎に工夫が必要になります。

ガラパゴス 015

【焙煎】

温度を上げすぎると芯まで火が入る前に表面が焦げてしまうので、最初から熱を逃がしつつ煎るというより熱風であぶるような感じで焼いていきます。煙は、よくお茶屋さんの店頭で、紙コップで売っているグリーンティのような、甘い緑茶のような香り。

イチハゼは軽快な心地よい大きな音でパチパチッっと聞こえてきます。イチハゼまでの時間を長めに取っているので、二ハゼが聞こえた瞬間に火を止めました。

オーガニック独特の干し草っぽい香りと、ほんの~りと黒飴を薄めたような甘さ。もおすすめの飲み方は常温です。

※現在は販売の予定がありません。