焙煎記録:ブレンド「寒明」

2月の定期便ブレンド「寒明(かんあけ)」

二十四節気の、立春から雨水まで頃をこう呼ぶそうです。

今回は、ペルーマチュピチュ、東ティモールの2種のブレンド。

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オーガニックの東ティモール。粒は大きく、欠点豆も少ない。

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弱火で時間をかけて中煎りに。控えめのイチハゼから1~2分。表面にうっすら照りがでたところで煎り止め。

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ペルー マチュピチュ

こちらもオーガニック。普段は深煎りにすることが多い豆ですが、今回は中煎り。

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焙煎度をほぼ同じにしたアフターミックス。

オーガニック特有の草のような香りを活かして、春の木の芽のような若い苦みを出したブレンドです。

焙煎記録:ブレンド「笹鳴」

1月の定期便ブレンド「笹鳴(ささなき)」

秋冬は山から里へ下りてきて笹薮の中で越冬するウグイスの地鳴きのこと。チッチッと鳴くそう。聞いてみたい。

豆は5種。プリミックス、中深煎り。

・ブラジルサントスno.2

・エルサルバドル マハワル モンターニャ

・グァテマラ アンティグア ラ アゾテア

・タイチェンライ オリエンタルファズ

・エチオピア グジ クオリティ1

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ベースのブラジルサントスno.2 ビターな感じを出したかったので、普段ほとんど使わないブラジルをメインに。今回はプリミックスで。サントス港に集荷された豆のミックス。産地もおそらくばらばら。

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ブラジル、想像以上に状態は悪い。12.5%減。状態が悪いというよりは欠点豆が多い。特に虫食いと発酵。最近はシングルオリジンばかり使っているので、スタンダードはこんなものだっただろうか、と思う。焼き上がりは殻豆が多く、スカスカ感がある。

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エチオピアグジ クオリティ1。相変わらずのきれいさ。ブレンドには欠かせなくなったグジ。イルガチェフェ、マタリ、ハラ―、などに比べてフルーティ感は弱めだけれど、苦みの強い豆との相性が抜群。

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グァテマラ アンティグア。半端に残っていた豆を少々投入した感じで、あまりブレンドに影響はない。バランスの良い豆なので少々使うくらいだと前には出てこない。

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エルサルバドル。豆の状態はとても良い。これもつなぎ用に使う感じ。あまり前面には出てこないように。

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タイチェンライオリエンタルファズ。

昨年のロットはあまり良くなかったので、もっぱらブレンドに。ニュートラルでほわっとしていて甘みもあるのでハンバーグでいうところの、パン粉的なつなぎ。

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3kg2時間のハンドピックを先に済ませてからミックス。焼き上がりは、ビターな感じは良く出ているもののグジの抑えが効きすぎた感じも。もう少しブラジルらしさを推しても良かっただろうか。

 

焙煎記録:ブレンド「行火」

12月の定期便ブレンド「行火(あんか)」

行火:木や土、鉄製の枠に豆炭火鉢を入れた暖房具。持ち運び用。

もとは仏教用語で、行(あん)は運ぶという意味があるそう。行灯=灯りを運ぶ、行脚=足を運ぶ、など。

珈琲も飲み物としてだけでなく、寒い日は熱々のカップを両手で包むと、とても暖かい暖房具になると、いいなと。

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グァテマラ アンティグア ラアゾテアと、モカマタリをプリミックスで1バッチ。

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香りと酸味のアクセント用なので、やや浅めに。火力は小さくして焙煎時間を長めにとる。

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そのあと、グァテマラだけを焙煎。モカとプリミックスよりもやや強めの火力で。

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ブルンジ ブルボンAA 初見。欠点豆は少なく、粒は中くらい。

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焦がさずハゼさせないよう、弱火でとろとろ焙煎。時間も長め。

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東ティモール。粒は大きく豆面がとてもきれい。虫食いが少々。今年の東ティモールはアラビカ100%ではなく、ロブとのハイブリットが入って来ていると聞いたけれど、粒はそれほど変化したように見えない。もしかしたらパストなのかな。

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深めに焙煎しても、中煎りでもつやと膨らみがとてもいい。強火で力強いイチハゼから、火力を落としてニハゼ直前で煎り止め。

まとまりのなさはひとつの個性になって、味わいにグラデーションが出ている仕上がりに。もう少し、モカ系を足しても良いかもしれない。

 

焙煎記録:ブレンド「霜葉」

11月の定期便ブレンド「霜葉(そうよう)」

唐の詩人、杜牧(とぼく)の七言絶句「山行」から名前を頂きました。

遠上寒山石径斜
白雲生処有人家
停車坐愛楓林晩
霜葉紅於二月花
遠く晩秋の山に登ると、石混じりの小道が斜めに続いている
下界から離れたこんな高い場所にも民家がある
(手押し)車を止めて、何とはなしに楓の林の夕暮れを眺めている
霜がかかって赤くなった紅葉は、二月に咲く桃の花よりもずっと赤い

4種の豆のブレンドです。

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メキシコ  クステペック。粒は大きめ。

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火力弱めで、長めに焼き、ハゼがきつくならないよう、じわじわと甘味を引き出す感じで。

落ち着いた香ばしさになります。

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上記のメキシコと、ペルー マチュピチュをプリミックス(焼く前に混ぜる)。

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メキシコ単体だと個性が出にくいので、ペルーとプリミックスしたものを、やや深めに焙煎。二ハゼぎりぎりのところまで。

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イエメン モカマタリ。毎度ハンドピックに時間のかかる豆。ここを丁寧にやることで、仕上がりが大きく変わります。

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粒が小さいので、火力強めで、さっと煎りあげる感じ。焼きあがってから再度しっかりハンドピック。

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グァテマラ アンティグア ラアゾテア。半分を中煎り、半分を中深煎りに。

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メキシコと、モカのつなぎ役の豆。酸味も苦みもあるバランスのよい味わいで、全体を安定させます。

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出来上がり。メキシコをメインに、ペルー、とグァテマラを配し、アクセントにモカ。

落ち着いた香ばしさの奥に、鼻に抜けるモカの香りが楽しめます。

 

焙煎記録:ブレンド「猿酒(さるざけ)」

10月の定期便ブレンド。

猿酒とは、猿が木のうろや岩石のくぼみに蓄えた木の実や果実が自然発酵して出来たお酒のことを言うそうです。

ただ、野生の猿は食料を貯蔵する習慣がないため、実際は伝説上のお酒ということになりそうです。

秋の味覚が美味しい季節、芋栗南瓜、胡桃などを使った甘いものと相性が良いブレンドに仕上げました。

洋菓子なら、キャラメルを絡めた胡桃、スイートポテト、パンプキンパイなど。

和菓子なら、芋羊羹や栗あんの最中など。

濃い目に抽出して、ウイスキーをひと垂らしすれば、猿酒とは行かないまでも、ほんのり秋の良い心地を感じて頂けると思います。

使った豆は5種。

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①タイチェンライ オリエンタルファズ。乾燥が進んできているので、ニュークロップが入るまではシングルを休止して、在庫はブレンドに投入。

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もともとマイルドな味わいの豆なので、今回のブレンドではベースに。二ハゼを聞いてから冷却。中深煎りで。

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②エチオピアグジクオリティ1

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今回は中煎りで、澄んだ酸味を少々アクセントに入れます。

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➂グァテマラ アンティグア ラ・アゾテア。見た目で乾燥しているかな、と思ったけれど、焙煎してみるとそうでもない。

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焦がさないよう、弱火で長めに焙煎。水分が意外と多かったため思ったより長い焙煎になった。

酸味を残しつつ、バランスよく。

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④ペルーマチュピチュ。エチオピアグジととても相性が良いので、苦みの要に。

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深煎りで苦みを前に持ってくる。タイチェンライと並んでベースに。

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⑤マンデリン ブルーリントン 今期で一番きれいなマンデリン。

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二ハゼまで焼き切って、甘みとコク、ややスモ―キーな香りをアクセントに使います。

ネルドリップが最適だと思いますが、ペーパーなら、豆を多めに使い、ペーパー2枚重ねでじっくり蒸らして抽出すると良いと思います。

焙煎記録:ブレンド「風日待」

9月の定期便ブレンド「風日待(かざひまち)」

風日待とは、二百十日の頃、風を鎮めるために村人たちが仕事を休んで神社に籠る行事のことです。

いまは形骸化していますが、私の地元でも明日は「お籠り」の日です。

収穫を前に風の神様を鎮める祭り、日々の生活からは遠ざかっている神事ですが、自然を畏れ敬う心もちを忘れずにいたいと思います。

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プリミックスのグァテマラ ブルーレイクSHBとホンジュラスHG。生豆の画像撮り忘れました。

イチハゼから火力を落として、二ハゼ直前で冷却。

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タイチェンライ オリエンタルファズ。パストクロップ(前年の豆)なので、やや乾燥が進んでいます。丁寧なハンドピックが必要。

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焦がさないことを一番注意しつつ、二ハゼ始まるまでじっくりと。イチハゼが弱く、火力に気を使いました。

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メインのメキシコ  クステペックSHB。 豆が大きく、センターラインのはっきりした豆。

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酸味を抑えるため、二ハゼのピークまでしっかり焼きます。

力強い風をイメージして作りましたが、仕上がりはなぜかまろやかで柔らかい口当たり。グァテマラの香りが効いていて複雑な風味になりました。

 

焙煎記録:ブレンド「水脈(みお)」

8月の定期便ブレンド「水脈(みお)」

<水脈の果て炎天の墓碑置きて去る>

俳人金子兜太さんの句から。

南方のトラック島で終戦を迎え、島を去るときに読んだ句とのこと。

–自分はここで一死んだようなものだ。墓碑をここに置いていこう。残りの人生は戦争のない国をつくるために尽くそう。

という思いを読んだ句だそうです。

ブレンドに、これからも戦争のない日々が続きますように、コーヒーの生産国で続く内戦や紛争が早く終わり、小さな子どもたちが学校にも行けず働いたり、飢えたりすることがなくなりますように、という思いを込めて。

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ブレンドのベースのホンジュラスHG(ハイグロウン)。やや乾燥しています。粒は大きめで揃っています。

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苦味が出すぎないよう、2ハゼの始まりまで強火でいっきに煎りあげます。味わいはとてもマイルドで癖がない感じ。

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インドモンスーン。淡い黄色のきれいな生豆。ほうじ茶のような香ばしさが特徴。

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隠し味で香ばしさを。こちらも強火でさっと煎ります。からからに乾燥している(わざと)豆なので焼き時間も短いです。

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エチオピア イルガチェフェG1。ナチュラル精製で、甘酸っぱい珈琲の果肉の香りが残っています。G1haはやり欠点豆が少なく、粒の揃いも良く焙煎しやすいです。

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1ハゼ後すぐに冷却。さわやかさと甘味をミックスしていきます。煎り上がりの豆面はやはりモカ。しっかりハンドピック。

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3種の豆のブレンドです。モカの香りはやや抑えられていますが、甘みはしっかり引き出されて、ホンジュラスの苦みの後に甘さが余韻になって出てくる。面白い味に仕上がりました。